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逆流性食道炎

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎(Gastroesophageal Reflux Disease, GERD)は、胃の内容物が食道に逆流することで食道粘膜に炎症が生じる病気です。本来、胃の入り口である下部食道括約筋がしっかり閉じることで逆流を防いでいますが、その機能が低下すると胃酸や消化酵素を含む胃液が食道に逆流し、胸やけや呑酸(すっぱい液体が喉まで上がる感覚)といった症状を引き起こします。

近年、日本において逆流性食道炎は急増しており、生活習慣病の一つとして注目されています。特に、欧米型の食生活(高脂肪・高カロリー食)や肥満人口の増加、加齢、ピロリ菌感染率の低下が影響していると考えられています。厚生労働省や日本消化器病学会の報告によると、日本人の約10〜20%が逆流性食道炎に関連する症状を経験しているとされており、決して珍しい疾患ではありません。

欧米ではさらに高い有病率が報告されており、米国では人口の約30%が週に1回以上の胸やけを経験しているとされています(Mayo Clinic, 2022)。また、WHOの統計によれば、世界的に逆流性食道炎の有病率は年々増加しており、特にアジア諸国では生活習慣の欧米化とともに増加傾向にあります。

逆流性食道炎は生命に直ちに危険を及ぼす病気ではありませんが、生活の質(QOL)を著しく低下させることが知られています。夜間の胸やけや咳による睡眠障害、日常的な食事制限、仕事や勉強への集中力低下など、幅広い影響を及ぼすため、早期に適切な診断と治療を受けることが重要です。

逆流性食道炎の主な症状

逆流性食道炎の症状は多岐にわたり、患者によって感じ方や重症度が異なります。典型的な症状だけでなく、意外な自覚症状が現れることもあるため注意が必要です。以下では、代表的な症状とその特徴について詳しく解説します。

胸やけ(Heartburn)

もっともよく知られている症状が「胸やけ」です。胸の奥が焼けるような感覚が食後や就寝中に起こり、横になると悪化しやすいのが特徴です。これは胃酸が食道に逆流して粘膜を刺激することにより生じます。日本消化器病学会の調査によると、胸やけを週1回以上経験する人は全人口の約15%にのぼるとされています。

呑酸(Regurgitation)

酸っぱい液体や苦い胃液が喉や口に上がってくる感覚を「呑酸(どんさん)」と呼びます。逆流性食道炎では非常に特徴的な症状で、胸やけと並んで診断の重要な手がかりとなります。呑酸は就寝中や前かがみの姿勢で特に起こりやすく、口臭や喉の不快感の原因にもなります。

慢性的な咳・咳払い

胃酸が食道から喉や気道にまで影響を及ぼすことで、慢性的な咳や咳払いが続くケースがあります。これは「咳喘息」や「慢性気管支炎」と誤診されることもあり、逆流性食道炎の「隠れた症状」として知られています。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究では、慢性咳患者の約30%が逆流性食道炎に関連していると報告されています。

喉の違和感・声がれ

喉に「何かつかえているような感じ」や「声のかすれ」が生じる場合があります。胃酸が咽頭や声帯にまで到達し、炎症を引き起こすことが原因です。耳鼻咽喉科を受診しても原因が見つからず、最終的に逆流性食道炎が疑われるケースも少なくありません。このような症状は「咽喉頭逆流症(LPRD)」と呼ばれることもあります。

嚥下障害(食べ物が飲み込みにくい)

食道粘膜に炎症が繰り返し起きると、食道の内壁が狭くなり「嚥下障害(えんげしょうがい)」を引き起こすことがあります。これは食道狭窄の前段階であり、重症化のサインとなるため注意が必要です。固形物を飲み込みにくい、喉につかえる感覚が続く場合は医師の診察を受けるべきです。

睡眠障害と日常生活への影響

夜間に胸やけや呑酸が起こることで睡眠の質が低下し、日中の集中力や作業効率に影響を及ぼします。特に横になると逆流が促進されやすいため、睡眠不足や慢性的な疲労につながります。米国の大規模調査(Vakil N, 2006, Am J Gastroenterol)では、GERD患者の約75%が睡眠障害を訴えており、生活の質を大きく損なう要因となっています。

非典型的症状

逆流性食道炎には典型的な胸やけや呑酸以外にも、胸痛、動悸、口臭、歯のエナメル質の損傷、耳の違和感など、多様な非典型症状がみられることがあります。これらは心臓病や耳鼻科疾患と誤解されやすく、診断が遅れる要因になるため注意が必要です。

逆流性食道炎の原因とリスク要因

逆流性食道炎の発症には、胃酸の逆流を防ぐ機能の低下や生活習慣、体質など複数の要因が関与しています。以下に、代表的な原因とリスク因子を整理して解説します。

下部食道括約筋(LES)の機能低下

胃と食道の境目には「下部食道括約筋(Lower Esophageal Sphincter: LES)」という筋肉が存在し、通常は胃酸が逆流しないように閉じています。しかし、このLESの機能が弱まると胃酸の逆流を許してしまい、食道粘膜に炎症が生じます。LESの機能低下は加齢や肥満、妊娠、特定の薬剤の影響で起こることが知られています。

食生活の影響

現代人の食生活は逆流性食道炎の発症に大きく関与しています。特に以下の食品・飲料は逆流を誘発しやすいと報告されています。
・脂っこい料理(揚げ物、肉料理)
・チョコレート
・コーヒーや紅茶、炭酸飲料
・アルコール(特にビールやワイン)
・香辛料の強い食事
これらは胃酸分泌を増加させたり、LESを弛緩させる作用を持つため、摂取頻度が高い人ほどリスクが上がります。

肥満

肥満は逆流性食道炎の最も強力なリスク因子の一つです。内臓脂肪が増えると腹圧が上昇し、胃が圧迫されて胃酸が食道に逆流しやすくなります。米国の疫学研究では、BMIが高い人ほど逆流性食道炎の発症率が有意に高いことが示されています(El-Serag HB, 2014, Clin Gastroenterol Hepatol)。

加齢

加齢に伴い、食道の蠕動運動(ぜんどううんどう:食べ物を胃に送る動き)が低下し、胃酸を排出する力が弱まります。また、LESの締まりも弱くなるため、高齢者は逆流性食道炎になりやすいと考えられています。

妊娠

妊娠中はホルモンの影響でLESの機能が低下しやすくなるほか、子宮が大きくなって胃を圧迫するため、逆流性食道炎が起こりやすくなります。妊婦の約半数が胸やけを経験するとされ、産婦人科でもよくみられる症状です。

薬剤の影響

一部の薬はLESを緩めたり、胃酸分泌を促進することで逆流性食道炎を悪化させる可能性があります。代表的な薬剤としては、
・カルシウム拮抗薬(高血圧治療薬)
・気管支拡張薬(喘息治療薬)
・抗うつ薬の一部
・ホルモン製剤
などがあります。持病でこれらの薬を使用している方は、逆流症状が悪化することがあるため注意が必要です。

ピロリ菌感染の影響

かつては日本人の多くがピロリ菌に感染していましたが、除菌治療の普及により感染率が低下しています。ピロリ菌が存在すると胃酸分泌が抑制されるため、感染率が下がった結果として胃酸分泌が増加し、逆流性食道炎が増えたという仮説もあります。実際に、ピロリ菌陰性者の方がGERDのリスクが高いという報告もあります。

姿勢・生活習慣

猫背や長時間のデスクワークは腹圧を高め、逆流を促す要因になります。また、夜遅い食事や就寝直前の飲食、暴飲暴食も胃酸の逆流を引き起こしやすくなります。

ストレス

心理的ストレスそのものが直接の原因とは言えませんが、自律神経の乱れや胃酸分泌の増加、生活習慣の乱れを通じて逆流性食道炎を悪化させると考えられています。

逆流性食道炎の検査・診断方法

逆流性食道炎の診断は、症状の問診だけで行われる場合もありますが、正確な診断や重症度の把握には各種検査が欠かせません。特に、症状が長引く場合や薬の効果が乏しい場合、合併症が疑われる場合には精密検査が推奨されます。ここでは、代表的な診断方法について解説します。

問診と症状スコア

最初のステップは詳細な問診です。胸やけや呑酸の頻度、食事や姿勢との関係、夜間症状の有無などを確認します。
加えて、日本で広く用いられている「Fスケール(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)」などの質問票を用いて、症状の程度を数値化することがあります。Fスケールは12項目の質問に対する回答を点数化し、合計点数が8点以上の場合にGERDの可能性が高いとされます。問診とスコアリングは非侵襲的で簡便なため、一次診療の現場でも有用です。

内視鏡検査(上部消化管内視鏡)

内視鏡検査は、逆流性食道炎の診断において最も信頼性の高い方法です。胃カメラを用いて食道粘膜を直接観察し、炎症やびらん(ただれ)、潰瘍の有無を確認します。
日本消化器内視鏡学会では、内視鏡所見を**ロサンゼルス分類(LA分類)**で評価しています。これは粘膜のびらんの広がり方に応じてA〜Dの4段階に分類する方法で、病態の重症度を客観的に評価できます。
また、内視鏡検査は食道炎だけでなく、食道がんやバレット食道といった合併症を早期に発見する上でも非常に重要です。胸やけが長引く場合や高齢者では、診断とスクリーニングを兼ねて内視鏡検査が推奨されます。

バリウム造影検査(X線検査)

バリウムを飲んでX線撮影を行い、食道の形態や胃酸の逆流の有無を調べる検査です。食道裂孔ヘルニアの有無を確認できるメリットがありますが、粘膜の炎症を直接観察できないため、診断の確定には不十分です。主に補助的な役割として利用されます。

24時間pHモニタリング

逆流性食道炎の診断においてゴールドスタンダードとされるのが「24時間食道pHモニタリング」です。細いチューブやカプセル型のセンサーを食道に設置し、24時間にわたって食道内の酸度(pH)を連続的に測定します。
この検査により、酸の逆流回数や逆流と症状との関連を詳細に把握することができます。特に、内視鏡で炎症が認められない非びらん性逆流症(NERD)の診断に有用です。

インピーダンス・pH複合検査

近年は、酸性の逆流だけでなく非酸性の逆流(胆汁や食物の逆流)も測定できる「食道インピーダンス・pH複合検査」が導入されています。これにより、逆流の種類や高さ、症状との関連をより正確に把握できるようになりました。薬剤抵抗性GERDの評価に特に役立ちます。

ピロリ菌検査

逆流性食道炎と直接的な関係は必ずしも明確ではありませんが、胃酸分泌の調節に影響を及ぼすピロリ菌感染の有無を調べることもあります。除菌後に胃酸分泌が増加してGERD症状が出るケースも報告されており、消化器内科の総合的な判断に役立ちます。

血液検査・呼吸検査など

逆流性食道炎そのものを診断するための血液マーカーはありませんが、合併症の評価や他疾患との鑑別のために血液検査が行われることもあります。また、呼気テスト(尿素呼気試験)はピロリ菌感染の有無を調べる目的で使用されます。

診断の流れまとめ

・軽症で典型的な症状(胸やけ・呑酸)の場合:問診とFスケールで診断 → 薬物療法開始
・症状が重い・長引く場合:内視鏡検査で粘膜評価
・内視鏡で異常なしでも症状が続く場合:24時間pHモニタリングやインピーダンス検査
・背景因子やリスクに応じて追加検査(バリウム、ピロリ菌検査など)

このように、逆流性食道炎の診断は段階的かつ総合的に行われます。

逆流性食道炎の治療法

逆流性食道炎の治療は、症状の軽減と再発予防、合併症の防止を目的に行われます。治療の基本は薬物療法と生活習慣の改善ですが、重症例では外科的手術が選択されることもあります。以下では、それぞれの治療法について詳しく解説します。

薬物療法

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

逆流性食道炎の第一選択薬は プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor: PPI) です。胃酸分泌を強力に抑制する作用があり、胸やけや呑酸といった症状を短期間で改善します。代表的な薬剤としては、オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾールなどがあります。
日本消化器病学会のガイドラインでも、PPIはGERD治療の中心的存在として位置付けられています。治療開始後、通常は2〜8週間の投与で症状改善と粘膜治癒が期待できます。

H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)

H2受容体拮抗薬(H2 Blocker) は、ヒスタミンH2受容体を阻害して胃酸分泌を抑える薬です。ファモチジンなどが代表例で、PPIほど強力ではありませんが即効性があります。軽症例や夜間の症状に対して頓用的に使用されることもあります。

制酸薬・粘膜保護薬

アルミニウムやマグネシウムを含む制酸薬は、すでに分泌された胃酸を中和して症状を緩和します。また、スクラルファートなどの粘膜保護薬は食道粘膜を保護し、炎症の修復を助けます。いずれも補助的に用いられることが多いです。

その他の薬剤

ドンペリドンなどの消化管運動改善薬は、胃の排出を促して逆流を減らす作用があります。また、最近ではカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)も登場し、PPIに代わる治療薬として期待されています。

生活習慣の改善

薬物療法と並行して、生活習慣の見直しは再発防止に欠かせません。以下のような改善策が推奨されています。

食事内容の工夫

脂っこい食事、チョコレート、アルコール、カフェイン飲料、香辛料は避ける。

食事のタイミング

就寝の2〜3時間前には食事を済ませる。夜食や寝酒は控える。

食事量の調整

一度に大量に食べず、少量を複数回に分ける。

姿勢の改善

猫背を避け、腹圧を高める姿勢を長時間とらない。睡眠時には枕やベッドを高くして上半身を起こす。

体重管理

肥満は大きなリスク因子のため、適正体重の維持が推奨される。

禁煙・禁酒

喫煙はLESを弛緩させ、アルコールは胃酸分泌を増やすため、両者の制限は有効。

こうした生活習慣の改善は、薬物療法の効果を高めるとともに再発予防にもつながります。

外科的治療

薬物療法や生活改善で十分な効果が得られない場合や、重度の合併症を伴う場合には手術が検討されます。

噴門形成術(Nissen手術)

もっとも一般的なのは Nissen噴門形成術 です。胃の一部を食道の周囲に巻きつけてLESを補強し、逆流を防ぐ方法です。腹腔鏡手術として行われることが多く、成功率は高いとされています。

内視鏡的治療

近年は、内視鏡を用いた逆流防止治療も研究されています。たとえば、食道胃接合部にレーザーやラジオ波を照射して組織を収縮させる方法や、特殊な器具で弁のような構造を形成する方法があります。まだ一般的ではありませんが、低侵襲治療として期待されています。

治療選択の流れ

1.軽症 → 生活習慣の改善、H2ブロッカーや制酸薬
2.中等症以上 → PPIを中心とした薬物療法
3.薬で改善しない場合 → 検査強化(pHモニタリング、インピーダンス検査)
4.重症・薬剤抵抗性 → 外科的治療の検討

このように、逆流性食道炎の治療は症状や重症度に応じて段階的に選択されます。

予防とセルフケア

逆流性食道炎は、一度治療しても生活習慣が改善されなければ再発することが多い病気です。そのため、日常生活の中で行えるセルフケアや予防策を意識することが重要です。ここでは、医学的に有効性が確認されている方法を中心に紹介します。

食事習慣の工夫

・就寝前の飲食を避ける
食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすいため、少なくとも就寝の2〜3時間前には食事を終えることが推奨されます。

・脂っこい食事を控える
脂質は胃の排出を遅らせ、LESを弛緩させる作用があるため、揚げ物や肉の多い食事は控えめに。

・刺激物の制限
アルコール、カフェイン、炭酸飲料、チョコレート、香辛料は胃酸分泌を増やし、逆流を悪化させやすい。

睡眠環境の工夫

・枕やベッドの角度を調整
上半身を15〜20cm程度高くして寝ることで、胃酸の逆流を防げます。特に夜間の胸やけや呑酸に悩む人に効果的です。

・左側を下にして寝る
胃の形状上、左側を下にして横になると胃酸が食道に流れ込みにくくなります。

生活習慣の改善

・体重管理
内臓脂肪の増加は腹圧を高め、逆流のリスクを上げます。適正体重の維持が予防につながります。

・禁煙
喫煙はLESを弛緩させる作用があり、逆流性食道炎の発症・悪化に直結します。禁煙は最も有効なセルフケアのひとつです。

・ストレスコントロール
ストレスは自律神経を乱し、胃酸分泌を増やします。十分な休養やリラクゼーション法の導入が予防に役立ちます。

薬の自己判断を避ける

市販の制酸薬やH2ブロッカーを使って一時的に症状が軽減することもありますが、長期にわたる自己治療は危険です。食道炎の進行や食道がんリスクを見逃す可能性があるため、症状が続く場合は必ず医師に相談しましょう。

再発予防の重要性

逆流性食道炎は再発率が高く、治療後に症状が戻るケースが多いことが知られています。生活習慣改善は「治療の一部」であると同時に「再発予防の鍵」でもあります。

放置した場合のリスク

逆流性食道炎は「命に直結しにくい疾患」と思われがちですが、放置すると深刻な合併症や生活の質(QOL)の低下を引き起こします。症状が軽度であっても長期間続く場合には、医療機関の受診が欠かせません。以下に、放置した場合に考えられるリスクをまとめます。

慢性食道炎

胃酸の逆流が繰り返されると、食道の粘膜に炎症が慢性的に生じます。炎症が続くことで粘膜は脆くなり、出血や潰瘍を起こすリスクが高まります。慢性的な炎症は、日常生活における胸やけや痛みの悪化だけでなく、組織の変化を引き起こす危険因子となります。

食道潰瘍

炎症が進行すると、食道の粘膜に深い傷(潰瘍)が形成されることがあります。潰瘍は出血や強い胸痛を伴い、貧血の原因になることもあります。特に高齢者や基礎疾患を持つ人では治癒が遅れ、慢性化するリスクが高まります。

食道狭窄

潰瘍や炎症が繰り返されると、食道の組織が瘢痕化(はんこんか)し、内腔が狭くなることがあります。これを「食道狭窄」と呼びます。狭窄が進むと食べ物が通りにくくなり、嚥下障害を引き起こします。重症の場合は固形物どころか水分の摂取も困難になり、栄養不良や脱水のリスクが高まります。

バレット食道(前がん病変)

逆流性食道炎を長期間放置した場合、食道の粘膜が胃や腸に似た性質の上皮に置き換わることがあります。これを「バレット食道」と呼び、食道腺がんの前がん病変として知られています。
米国の研究によると、GERD患者の約10%がバレット食道を合併し、その一部が食道がんに進展すると報告されています(Vakil N, 2006)。

食道がんのリスク

特に「バレット食道」がある患者では、食道腺がんの発症リスクが健常者の30〜40倍に高まるとされています(El-Serag HB, 2014)。日本では食道扁平上皮がんが多いですが、欧米ではGERDを背景とした食道腺がんの増加が社会問題となっています。生活習慣の欧米化が進む日本でも、今後増加が懸念されています。

生活の質(QOL)の著しい低下

医学的なリスクだけでなく、胸やけや睡眠障害が続くことで、仕事や学業への集中力低下、食生活の制限、精神的ストレスなど、生活の質全般に悪影響を及ぼします。患者の中には「外食が怖い」「寝不足で仕事に支障が出る」といった悩みを抱える方も少なくありません。

まとめ

逆流性食道炎を放置すると、単なる「胸やけの病気」ではなく、潰瘍・狭窄・バレット食道・食道がんといった深刻な合併症につながる可能性があります。症状が続く場合は、早めの医療機関受診が必要です。

最新研究・論文紹介

逆流性食道炎(GERD)は世界的に研究が盛んな分野であり、近年も治療法や病態理解に関する多くの論文が発表されています。ここでは、信頼性の高い国際的な研究をいくつか紹介します。

PPI長期使用に関する研究

PPI(プロトンポンプ阻害薬)はGERD治療の第一選択薬ですが、長期使用に関しては安全性への懸念もあります。
米国ハーバード大学の研究(Harvard Health Publishing, 2021)では、PPIを長期間使用した患者において腸内細菌叢の変化や腎機能障害のリスクが指摘されました。ただし、リスクの絶対値は低く、ガイドラインでは「必要最低限の投与期間」が推奨されています。

バレット食道と食道がんリスク

PubMedに掲載されたレビュー論文(El-Serag HB, 2014, Clin Gastroenterol Hepatol)では、GERDとバレット食道の関連性について解析が行われました。その結果、GERD患者は健常者と比べて食道腺がんのリスクが顕著に高いことが示されました。これは「GERDの早期治療と継続的な管理」が重要である科学的根拠となっています。

生活習慣とGERD

WHOが2020年に発表した報告書では、欧米型の食生活(高脂肪・高カロリー)や肥満がGERDの主要なリスク因子であると明記されています。さらに、近年のアジア諸国における患者数増加も、生活習慣の変化が大きく寄与していると指摘されています。

新しい治療薬の開発

近年、日本発の新しい薬剤として カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB) が登場しました。従来のPPIよりも作用発現が早く、持続的に胃酸分泌を抑制できるため、PPI抵抗性GERDの治療に期待されています。2020年以降、複数の臨床試験が進行しており、国際的にも注目されています。

非酸性逆流の研究

これまでGERDの原因は「胃酸の逆流」とされてきましたが、近年は胆汁や消化酵素といった非酸性逆流の関与が注目されています。欧州消化器学会の研究(Vakil N, 2006, Am J Gastroenterol)では、インピーダンス・pH複合検査を用いることで、非酸性逆流が慢性咳や喉の違和感に関与している可能性が明らかになりました。

まとめ

最新の研究では、GERDは単なる「胃酸逆流の病気」ではなく、生活習慣・薬剤耐性・非酸性逆流など多因子的に発症する複雑な疾患であることが示されています。今後も新しい薬剤や検査法の開発により、より個別化された治療が進んでいくと考えられます。

世界と日本の動向

逆流性食道炎(GERD)は、世界中で増加傾向にある消化器疾患のひとつです。かつては「欧米に多く、日本やアジアには少ない疾患」と考えられていましたが、近年の生活習慣の変化により、その傾向は大きく変わってきています。

日本における現状

厚生労働省の調査や日本消化器病学会の報告によれば、日本におけるGERD有病率はここ20年間で急速に上昇しています。かつては1〜2%程度とされていましたが、現在は10〜20%にまで増加していると推定されます。背景には、欧米化した食生活、肥満人口の増加、ピロリ菌感染率の低下などが挙げられます。
また、日本は高齢化社会であり、加齢によるLESの機能低下や食道運動の低下も発症率増加に影響していると考えられます。

欧米との比較

米国や欧州では、GERDはすでに国民病ともいえる存在です。米国消化器病学会(AGA)の報告では、アメリカ成人の約30%が週に1回以上胸やけを経験しているとされます。さらに、食道腺がんの増加が社会的課題となっており、GERDとバレット食道が強く関与していることが明らかになっています。
一方、日本では食道扁平上皮がんが多いものの、近年は腺がんの割合が徐々に増加しています。この背景には、GERDの増加が密接に関連していると考えられています。

WHOや国際機関の報告

世界保健機関(WHO)は、生活習慣病の一環としてGERDを取り上げており、肥満や食生活の欧米化が世界的に有病率を押し上げていると警鐘を鳴らしています。また、国際的な疫学研究でも、アジア諸国におけるGERDの増加は共通した傾向であり、今後さらに医療現場で重要視されることが予測されています。

今後の展望

今後、日本におけるGERD診療では、

・生活習慣改善の啓発(肥満・食事・喫煙・飲酒対策)
・早期発見のための内視鏡検査の普及
・新薬の臨床応用(P-CABなど)
・合併症予防のための長期フォロー体制

が重要になると考えられます。

まとめ

逆流性食道炎は、胸やけや呑酸といった症状から始まり、放置すれば潰瘍や狭窄、さらには食道がんのリスクにまでつながる疾患です。
発症には食生活・肥満・加齢・姿勢・薬剤・ピロリ菌など複数の要因が関与しており、現代社会において誰にでも起こり得る病気といえます。
治療の基本は、PPIを中心とした薬物療法と生活習慣の改善です。症状が改善しても再発しやすいため、セルフケアを継続しながら定期的な医療機関でのチェックが推奨されます。
日本におけるGERD患者数は年々増加しており、欧米と同様に「国民病」としての認識が広がりつつあります。最新の研究では非酸性逆流や新薬の開発も進んでおり、今後さらに治療の選択肢が拡大していくでしょう。
胸やけや咳、喉の違和感といった症状が続く場合は、自己判断で放置せず、専門の医療機関を受診することが重要です。

 

◼️ 監修者情報
鈴木 崇文(すずき たかふみ)
麻酔科専門医
やさしいクリニック 広尾 白金 院長
日本麻酔科学会 所属

◼️ 運営主体
やさしいクリニック 広尾 白金
内科 皮膚科 アレルギー科 ペインクリニック内科
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2丁目31-3 O-KA building 3F
https://yasashii-clinic.jp

◼️ 最終更新日
2025年9月2日

◼️ 参考文献
厚生労働省「逆流性食道炎に関する情報」
https://www.mhlw.go.jp/

日本消化器病学会「GERD診療ガイドライン 2021」
https://www.jsge.or.jp/

国立がん研究センター「バレット食道と食道がん」
https://www.ncc.go.jp/

日本消化器内視鏡学会「食道疾患における内視鏡診断」
https://www.jges.net/

Mayo Clinic."GERD (Gastroesophageal reflux disease)."
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gerd/

National Institutes of Health (NIH). "GERD Research."
https://www.nih.gov/

World Health Organization (WHO). "Digestive diseases burden."
https://www.who.int/

Harvard Health Publishing. "Lifestyle changes for GERD."
https://www.health.harvard.edu/

Vakil N, et al. "The Montreal definition and classification of GERD." Am J Gastroenterol. 2006.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16928254/

El-Serag HB. "Epidemiology of GERD." Clin Gastroenterol Hepatol. 2014.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24267409/

◼️ 免責事項
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断や治療の代替にはなりません。症状がある場合は必ず医師にご相談ください。記事の内容は執筆・監修時点の最新情報に基づいています。

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